株価が動く個別要因

7月 12
2010



株価の長期的な水準は、業績や財務によって決まる傾向があります。ただし、日々の細かな株価の動きとなると、ニュースなどの個別の要因の影響が大きくなります。これらの要因を、株の専門用語では「材料」と呼びます。さまざまな材料がありますので、1つずつ順に見ていきましょう。

●新製品の発表
もっとも分かりやすい材料としては、「画期的な新製品が発表された」というものがあります。画期的な新製品なら、その会社の業績に大きく貢献することが予想されるので、それを先取りして株を買う人が増え、株価が上がります。

●業績予想の修正
企業が業績の予想を発表することもよくありますが、予想が大幅に修正されると、株価もそれに反応します。以前より良い予想が出れば株価は上がりますし、悪い予想が出れば株価は下がります。

●株式分割の発表
先に学習したように、株式が分割されることがあります。理論的には、株数が増える分だけ株価は下がりますので、株全体の価値(=株数×株価)は変化しません。ところが実際には、株式分割が発表されると株価が上がることがよくあります。

株式分割が実際に行われると、分割の比率に応じて株価が下がりますが、それによってその株を少額で買うことができるようになり、投資家が増えることが予想されます。投資家が増えることは、株の需要が増えることと同じです。したがって、株式分割が発表された時点で、その株の株価が上がりやすくなるわけです。

特に、成長中の企業は株式分割をよく行う傾向があり、それによって株価がどんどん上がります。例えば、ホームページの検索で有名な「ヤフー」は、1997年11月に上場して以来、2005年3月の時点までに1:2の株式分割を10回も行っていて、上場時の1株が現在では1024株に増えています。株式分割を考慮すると、2005年3月時点の株価は上場時の250倍強にもなっています。

●増資
企業が資金を調達するために、株を新たに発行することがあります。これを「増資」と呼びます。増資が行われると株数が増えますが、会社の業績は急には変化しないので、1株あたりの利益は減ります。つまり、増資が発表されると株価は下がる傾向があります。

●仕手(して)
ある会社の株をひそかに買い集めた後、「この会社の株は上がる」というような情報を流して株価を吊り上げ、その後に買い集めた株を売り抜けようとする入(あるいは集団)がいます。このような(集団)を「仕手」と呼びます。ある株に仕手が介入すると、その株の株価は乱高下します。場合によっては、短期間で数倍に値上がりすることもあります。しかし、買いの勢いが続かずに、1日2日で値上がりが終わってしまい、その後に急落することもあります。

後になって株価の動きだけを見てみると、仕手株を買えば簡単に儲けられそうに見えます。しかし、実際にはいつ仕手化か起こるか分かりませんし、仕手化している最中には株価がどのように動くか予想がつかないので、仕手株に手を出すのは危険がともないます。

●企業の合併や買収
ここ数年、企業の合併や買収(M&Aとも呼ばれます)が行われることが多くなりました。特に、相手企業の経営陣の同意を得ずに、その企業の株を買い占めて買収する「敵対的買収」が増えています。

買収が発表されると、さまざまな思惑が広がって株価が乱高下しやすくなります。例えば、ライブドア対ニッポン放送・フジテレビの攻防では、ライブドアがニッポン放送の株を買い集めて議決権の35%を確保したことを発表してからは、ライブドアとフジテレビの間で株の争奪戦が起こり、さまざまな思惑によって、ニッポン放送の株価が揺れ動きました。

また、敵対的買収の際には、「○○円で株を買い取るので、皆さん売ってください」というように広告して、多くの投資家から株を買い占めることが一般的です。これを「TOB」(takeoverbidの略)と呼びます。 TOBでは、そのときの市場価格より高い値段が提示されるのが普通なので、株価が急激に上昇しやすくなります。それで、TOBの価格を超えてさらに株価が上がることもあります。




Comments are closed.