1株あたり純資産が多いと株価も高くなる

6月 14
2010



財務の良し悪しは、業績の良し悪しほどではないですが、株価に影響を与えます。ここでは、財務と株価との関係を学習します。

業績と株価を比較する際には、1株あたり利益を使いました。それと同様に、財務と株価を比較する際には「1株あたり純資産」という値を使います。
 
「純資産」とは、貸借対照表における資本のことで、資産から負債を引いたものです。純資産は企業の正味の資産価値を表します。

また、会社を続けることができなくなって清算する場合は、資産をすべて売り払って、それで負債を返済し、残ったお金を株主で分配することになっています。つまり、純資産は株主の物であるので「株主資本」とも呼びます。

「1株あたり純資産」とは、純資産を発行済み株式数で割った額です。1株あたり純資産は、1株あたりのその会社の正味の資産価値を表します。1株あたり純資産を英語で書くと「Book-value Per Share (ブックバリュー・パー・シェア)」で、その頭文字をとって「BPS」とも言います。

1株あたりの純資産の額が高いと、会社を清算する場合に、もらえる額も多くなります。そのため、1株あたりの純資産が高くなるほと、1株あたりの株価も高くなると考えられます。

なお、1株あたり純資産の額は、会社四季報にも掲載されています。業績の部分の右端に「1株株主資本」という列がありますが、これが1株あたり純資産です。

 


 



1株当たり純資産と株価の関係=PBR

6月 14
2010



1株あたり純資産と株価との関係を表す指標として「株価純資産倍率」というものがあります。英語で書くと「Price Book-value Ratio (プライス・ブックバリュー・レシオ)」なので、頭文字をとって「PBR」と呼びます。

PBRは、株価が1株あたり純資産の何倍になっているかを表します。式で書くと次のようになります。単位は「倍」です。

例えば、トヨタ自動車の1株あたり純資産は、2004年9月末時点で2,603円です。また、2005年4月の時点の株価は4,000円程度です。株価4,000円としてPBRを計算すると、次のようになります。

PBRが高い企業は、純資産の割に株価が高いことを意味します。そのような企業は、株価が上がりすぎている可能性があります。逆にPBRが低い企業は純資産の割に株価が低く、今後に株価が上がる可能性があります。

ただし、PBRが低くても、今後の成長が見込めそうになければ、株価は上がりにくいでしょう。 PBRが低くて、なおかつ成長性が高い企業が、投資対象として良いことになります。

東証一部の企業では、PBRが1倍前後のところが多くなっています。

なお、個々の企業の現在のPBRは、Yahoo!ファイナンス等のサービスを使うと調べることができます。

 


 



PBRが低い企業が狙い目?

6月 14
2010



2005年初頭に、ライブドアがニッポン放送に買収をしかけましたが、これからの日本の株式市場では、このような買収が活発化することが予想されます。その際には、PBRが低い企業が狙い目になりやすくなります。特に、PBRが1倍を割っている企業は、理論上は買収のターゲットになりやすくなります。

PBRが1倍割れするとどうなる?

例として、株価が800円で、1株あたり純資産が1,000円の企業があるとしましょう。

この場合、PBR=800円÷1,000円=0.8倍です。

また、この企業の発行済み株式数が1億株だとしましょう。この場合、株価の800円に発行済み株式数の1億株を掛けた800億円が、株をすべて買い占めるのに必要な金額です。

これに対して、この企業の純資産は、1株当たり純資産の1,000円に、発行済み株式数の1億株を掛けた1,000億円です。したがって、800億円を出してこの企業を買収すれば、正味1,000億円の資産が手に入ることになります。また、買収後にその企業を精算すれば1,000億円が手に入り、差額の200億円は儲けになる計算です。

もっとも、純資産の額はあくまでも帳簿上のものであり、実際に資産を売却しても、帳簿どおりの金額が手に入るわけではありません。しかし、PBRが低い企業なら、純資産と比較して、それほど高くない金額で買収できることには変わりありません。

PBRが低い企業を狙う企業も出てきた

ライブドアとニッポン放送の買収合戦の中で「M&Aコンサルティング」という会社もニュースによく出てきました。M&Aコンサルティングはニッポン放送の株も大量に保有していて、この会社がライブドアとニッポン放送のどちらにつくかが、勝負を決めるとも言われていました。

M&Aコンサルティングは、次のような手順で利益を上げることを事業としている会社です。

①資産価値に比べて株価が安い企業の株を大量に買う

②株主総会などを通じて「無駄な資産を整理して企業の価値を上げろ」「配当を増額しろ」といった ことを要求する

③企業が要求に応じて配当を上げるなどすると、株価も上昇する

④株価が上がったら、持ち株を売って利益を上げる

M&Aコンサルティングは、ニッポン放送以外にも、いくつかの企業の株を保有していて、上記のような行動をしています。そのターゲットの企業の1つに「東京スタイル」という企業があります。
東京スタイルは婦人服のメーカーで、百貨店などに東京スタイルのブランドの店が出ています。財務体質は非常に優秀で、自己資本比率が90%近くあります。しかも、資産の大半が金融資産で、金融資産からの利益がかなり大きいという特徴があります。

しかし、株価は資産価値ほどには高くなく、PBRが1倍を割っている状態が続いています。そのため、株を買い占めて買収すれば、多額の金融資産が手に入り、儲けることができる計算になります。