売上と利益

5月 31
2010



企業の株価を決める要因として、業績は非常に大きな存在です。株で儲けていくためには、業績の動向を判断して、その銘柄を買うべきかどうかを決めることが重要になります。

ここでは、業績の基本的な見方を学習します。売上と利益の関係や、利益の種類を学びます。

投資に適している企業かどうかを判断する上で「売上」や「利益」は非常に重要です。まず、売上と利益の関係から学んでいきましょう。

企業の目的は、商品やサービスを販売して儲けを出すことです。商品やサービスを販売することでお金が手に入りますが、それで手に入るお金のことを「売上」と呼んでいます。

例えば、10万円の商品を100個販売したとすると、売上は10万円×100個=1,000万円になります。

ただし、売上がそのまま企業の儲けになるのかというと、そうではありません。商品やサービスを販売するには、さまざまな費用がかかります。商品を仕入れるための代金や、従業員に支払う給料、また光熱費や福利厚生費などが、費用にあたります。

したがって、売上から費用を引いたものが企業の正味の儲けになります。これを「利益」と呼びます。式で表すと次のとおりです。


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5段階で利益を求める

5月 31
2010



売上から費用を引けば利益を求めることができます。ただし、これではあまりに単純すぎます。企業の決算書では「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」と5段階に分けて求めていきます。

売上総利益

企業の活動は、商品を仕入れて販売したり、原材料から製品を作って販売することです。この部分に絞って求めるのが「売上総利益」です。売上総利益は、次のようにして求めます。

売上総利益=売上-売上原価

「売上原価」とは、商品の仕入れにかかった代金や製品の材料の代金などを指します。したがって、売上原価は商品(製品)の動きだけに着目した利益にあたります。

また、売上総利益は「粗利益」(あらりえき)と呼ばれることもあります。

営業利益

商品や製品を販売する上では、さまざまな費用がかかります。例えば、従業員に支払う給料やボーナス(人件費)や、商品を宣伝する費用(広告宣伝費)などがあります。
これらの費用を総称して「販売費および一般管理費」と呼びます(略して「販管費」と呼ばれることもあります)。営業利益は、販売費および一般管理費も考慮した利益で、次のようにして求めます。

営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
 

また、「売上総利益=売上一売上原価」の関係をこの式に当てはめると、営業利益は次のようにも求めることができます。

営業利益=売上-売上原価-販売費および一般管理費

例えば、売上が100億円、売上原価が70億円、販売費および一般管理費が20億円だとすると、営業利益=100億円-70億円-20億円=10億円となります。

営業利益は、その企業の本業で得た利益にあたります。このため、その企業が投資対象として適しているかどうかを判断する上で非常に重要な情報なのです。

経常利益

企業が事業を営む上で、本業に直接関係ない部分でお金が出入りすることもあります。例えば、製造業の企業が、手持ちの不動産を誰かに貸して賃貸収入を得たとしましょう。その収入は、本業には直接には関係していません。

本業以外で得られる収入を「営業外収益」と呼びます。これに対して、本業以外の部分で出て行く費用を「営案外費用」と呼びます。これらも考慮して、企業の全般的な利益を求めたもののことを「経常利益」と呼びます。経常利益は次の式で求めることができます。

経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用

また、売上から順に経常利益を求めると、次の図のようになります。

税引前当期純利益と当期純利益

年度によっては、その年度特有の理由で、大きな利益や損失が出ることがあります。例えば、古くから持っている土地をまとめて処分したとしましょう。その場合、古い土地は値段が安い頃に買っているので、値上がりした今の時価で売ると大きな利益が
出ます。

このような、特定の年度でのみ発生する大きな利益や損失のことを「特別利益」「特別損失」と呼びます。そして、これらの損益も考慮して求める利益のことを「税引前当期純利益」と呼びます。税引前当期純利益は、次のようにして求められます。

税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失

また、次の式のように、税引前当期純利益から税金(法人税など)を引いたものを「当期純利益」と呼びます。

当期純利益=税引前当期純利益-税金

売上から順に税引前当期純利益と当期純利益を求めると、次の図のようになります。

株主への配当金は、通常は当期純利益の中から出ます。つまり、当期純利益の多い少ないは株価に大きく影響することになるので、当期純利益は重要な情報なのです。


 



会社四季報で売上と各種の利益を見る

5月 31
2010



会社四季報の業績の部分では、売上総利益と税引前当期純利益を除いて、売上とこれらの利益が順に掲載されています。

トヨタ自動車のデータを例に会社四季報で売上と各種の利益を見てみましょう。四季報では、売上と利益は次の図のような形式で掲載されています。

決算期

Aは連結の本決算です。左端の記号が「連」ではなく二重光になっているのはSEC方式であることを表しています。左の列には「03.3」などと書かれていますが、これは決算が行われた時期を表しています。例えば「03.3」は「2003年3月期決算」(2002年4月~2003年3月の1年分の決算)を表します。

また、「05.3予」のように「予」がついている行は、予想の数値であることを表します。春季号が発行された2005年3月の時点では、2005年3月期の決算はまだ終わっていないので、予想になっているわけです。

売上

左から2列目は売上です。単位は百万円になっています。例えば、2004年3月期の売上を見ると「17,294,760」とあります。これに百万円をかけた17兆2947億6千万円か、その期の売上になります。

営業利益

売上の右の列には、営業利益が出ています(単位は百万円です)。例えば、2004年3月期の営業利益は「1,666,890」とあるので、これに百万円をかけた1兆6668億9千万円の営業利益をあげたことが分かります。

経常利益

さらにその右の列には、経常利益が出ています(単位は百万円です)。例えば、2004年3月期の経常利益は「1,765,793」なので、百万円をかけた1兆7657億9千3百万円が経常利益です。

当期純利益

経常利益の右には「利益」の列がありますが、これは当期純利益を表します(単位は百万円です)。 例えば、2004年3月期の「利益」の列を見ると、「1,162,098」とあります。百万円をかけて、1兆1620億9千8百万円が当期純利益ということになります。

その他の行

先の会社四季報のトヨタ自動車のデータの図には、Aの部分の上下にも売上や利益の情報が出ています。

Aの上にあるBの部分は、各年の4月から12月までの決算数値を表します。この四季報は2005年3月に出たもので、2004年4月から12月までの決算は確定しているので、その数値が掲載されています。また、前年の同期と比較できるように、2003年3月から12月までの決算数値も掲載されています。

Aの下にあるCの部分は、中間決算の数値です。「中04.9」とありますが、これは2004年4月から2004年9月までの中間決算の数値を表します。また、「中05.9予」は、2005年4月から2005年9月の中間決算の予想数値を表します。

最後のDの部分は、単独決算の数値です。 決算には連結決算と単独決算があります。現在は連結決算が重視されていますが、単独決算の数値も掲載されています。

なお、子会社や関連会社がない会社の場合は、単独決算しかないので、連結決算の数値は掲載されません。